この日は、村井正誠記念美術館の開館10周年のセレモニーにお招きいただいた。館長の挨拶から始まり、この美術館を設計した隈健吾さんのスピーチ、夕方からはアートクラスの方々との夕食会へと連なる。
世界的な建築家、隈健吾さんの47歳のときの作品。はじめて訪れた村井邸が、彼の実家と同じ匂いがしたこと、木を使った建築にはその造形以外に木の匂いがあること、この美術館ではじめた木の使い方がその後の彼の作品の中に活かされていることなど、面白い話を一杯聴かせてもらった。
私が等々力に引っ越してきたころは、まだ古い家のままだった。誰が住んでいるのだろうと、通り過ぎるたびに訝しんだ。一度だけ、玄関先でお年をめされた男性を見かけた。それが生前の村井先生だったとは、随分あとになって知った。やがて、モダンな個人美術館に生まれ変わる。わずか直線距離で30mもはなれていないのにもかかわらず往復葉書で見学を申し込む。館長先生とは、朝の散歩でよく出会うようになり、娘を絵画教室に通わせるようになる。この10年を振り返ってみて、不思議なご縁が生まれたことになる。
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