帰国を前に、この日だけの贅沢。リージェントストリートから少しだけ脇に入ったTHE ARAKIへ。4年くらい前に銀座から移転してきた。6時と8時半、白木のカウンターに客が揃い、一斉にスタートするのは、相変わらずだった。
握りが始まり、ご主人から、お住いは、と話しかけられる。なんと答えるか迷いながら、東京というよりも等々力と答えることを選ぶ。あら輝は、もともと等々力の隣町、上野毛にあった。そう答えることが、彼の質問の意図に合うと思ったから。彼の記憶の中で、私が蘇ったようだった。高級店のため、滅多に足を運ばないにもかかわらず。
ロンドンのARAKIは、食材の自由度が広がり、進化していた。漬けにトリフ、イカに白キャビア、小豆ロールのデザート。当地の客の嗜好、食材の特性に合わせるため、ゼロから組み立て直したという。名を馳せたARAKIの新しい挑戦。進化した鮨、口の中でほどけていくような独特のシャリの握り加減。ご主人のお話を聴きながら経営とは何か、考えていた。